それでも、幸運の女神は微笑む
「パン」「スープ」「鶏肉」「人参」「玉ねぎ」「じゃがいも」等々・・・。

その後も異世界言語講座夕食編を行っていると、ムッシェさんがひょいっと片手をあげた。


「愛し子様!」


ムッシェさんの視線を追えば、出入り口の扉の方に、私を助けてくれたらしき少年がいた。

彼はムッシェさんに気付き、近づいてきた。




「ムッシェ、何か用?」

「はい。アサヒのことです」

「アサヒ?」

「ああ、名前も知りませんでしたか・・・この子です」


綺麗な赤と紫の瞳が私に向けられた。


「アサヒ?」

「うん!」

「そう。それで?」


するりと視線がムッシェさんの方に戻る。

静かで落ち着いた、淡々とした視線と声。まるで、感情がない機械のような。


「それで、アサヒの身元がわからなくてですね。
しばらくここにいてもらおうと思うのですが」

「そう」

「そうって、あのですねぇ・・・」



がっくりとムッシェさんがうなだれる。



「もう少し、興味をもってくださいよ。愛し子様が連れてきたんでしょう?」

「そうだけど、気まぐれだったから」

「ああ、まあ、そうでしょうね」


ムッシェさんは苦笑した。


「それで、アサヒをここにいさせてもいいですか?」

「いいんじゃない?」

「よし。とりあえずリーダーと砦の主からの了承はもらえた、と」

「いつも言ってるけどアイナが了承したなら俺の了承はいらない」





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