それでも、幸運の女神は微笑む
黙り込む彼。

遠い目をするムッシェさん。


も、もう一回お願いします!

「ラギア」


未だ黄金の瞳をした彼が静かに繰り返してくれる。

ありがとうございます!


「ら、ぎゅ・・・ンンッぎゅい、い、ぐい、ぃぎ、っ!!!ぎ!あ!
らぎあ!」

「うん」

「よく出来たな」


ラギアが頷いて、ムッシェさんが微笑む。

正解だ!!!


「らぎあ、らぎあ、らぎあ・・・びゃん!でくる!」

「・・・びゃん?」

「ああ、どうしても“うん”が言えなくてですね・・・」

「そう」

「言いやすいのでしょうか?“びゃん”」

「さあ」



ムッシェさんにアイナにラギア。

異世界言語は発音が鬼畜だけど、異世界の人はみんな優しい!

嬉しい!



「・・・・・・異世界?」

「どうしました?」

「いや・・・。
アサヒの発音矯正は大変そう」

「ああ。まあ、暇な奴も教えるでしょうし、大丈夫ですよ」

「うん」


小さな声で交わされた会話は、異世界言語超初心者の私には上手く聞き取れなくて。

意味がわからない単語がたくさんで。


言っていることはわからないのに、何か問うような美しい黄金の瞳が、妙に心に残った。




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