それでも、幸運の女神は微笑む
***



目が回る。




お母さんが笑う。あらあらって言うように。

『またなの?本当にツイてないわねぇ。
ほらほら、たかが糞くらいで泣かないの』

髪についた鳥の糞を丁寧に洗ってくれる。




目が回る。




お父さんが笑う。大丈夫だと言うように。

『心を込めて謝れば、きっと許してくれる。
お父さんも一緒に行くから。な?』

手を繋いで、窓ガラスを割ってしまった家のおじいちゃんに一緒に謝りに行ってくれる。




目が回る。




菜乃花と祐樹が笑う。楽しそうに。

『まーた大凶?もうそれ逆に奇跡でしょ』

『連続記録更新の写メ撮ろうぜ!』

神社で鼻の頭を赤くさせながら、奇跡に変わった大凶のおみくじを広げて笑い合った。




目が回る。



目が回る。



目が回る。


目が回る。

目が、回る・・・・・・––––––––







『きもち、わるっ・・・』


吐き気と共に私は目覚めた。

左肩がじくじく痛む。

ぐるぐる回る視界がだんだんと落ち着いてきた。


眼に映るのは黒灰色の石でできているらしい天井。



潤む目をパチパチ瞬いて、ぼんやり考える。




ここ、どこ・・・?




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