それでも、幸運の女神は微笑む
ぎょっとしている間に次々とドアが開く。

そうして妙齢の女性から少女まで幅広い年齢の女性たちが廊下にずらりと整列した。

更にぎょっとする。ぎょぎょっだ。



さっきまでの賑やかさと打って変わって、しんと静まり返った場にムムのこほんという咳払いが響く。

小さなムムの咳払いは可愛いくて、頬が緩んだ。


しかし口を開いたムムの声はかなりの大音量だった。

舞台女優か何かですかムムさん。



「私の隣にいる娘はアサヒ、18歳!
今日愛し子様がお連れになった娘です。
言葉が拙く左肩を負傷していますので気にかけてあげてください」

「「「「「はいっ!」」」」」

「マーニャ!」

「はいっ!」

「アサヒはあなたと相部屋となります。
よろしいですね?」

「もちろんですっ!」



大きく頷いたのはオレンジ色の髪に黄緑色の瞳の女の子。

私と同じくらいの年齢かな?

私と目が合うとふにゃっと笑いかけてくれた。


彼女は「マーニャ」って名前なんだろう。

言えるようにならねば!


口の中でもにゃもにゃ舌を動かしていると、マーニャが私の手を取った。

気が付くとすでに私とムムとマーニャしか廊下にはいなかった。

みんな部屋に戻ったんだろう。




「一緒に行こう、アサヒ」

「びゅん!」


「行こう」と誘われているのがわかった私は笑って頷いた。


「アサヒ。それでは私はアイナ様のところに行きますので」

「アサヒ」「私」「アイナ」「行く」というわかる単語からムムがアイナのところに行くのだと察する。



「わかちゃ!ありがとう、むむ」

「いえ。おやすみなさい、アサヒ」





< 41 / 153 >

この作品をシェア

pagetop