それでも、幸運の女神は微笑む
一つ綺麗なおじぎをして、ムムは踵を返した。



「おやすみなさい」ってどんな意味だろう?

さようなら以外の別れの挨拶・・・バイバイって意味かな?

いや、ムムのイメージ的に違うかな。


ムムはいつでもきちんとしてて丁寧な感じがする。

まだちょっとしか一緒にいないけど、今までの人への接し方からなんとなくそう感じたんだ。


あんまりくだけた言い回しはしないように思う。

12歳の少女なのに・・・いや、12歳の少女だから、だろうか。

さっきの他の女性たちへの対応からして、ムムの立場は12歳という年齢では考えられないくらいには高いんじゃないかな。

自分よりずっと年上の大人を相手に侮られないようにするには、年相応の言動ではいけないんだろう。



まぁ、全部想像の域を超えないし、今の私に確かめる術なんてないんだけど。






「おーい、アサヒ?」

「びゃっ!!!すみませんでした!!!」


目の前でひらりとカサついた手が振られて、慌てて謝った。

うわあ!思考の世界にどっぷり浸ってた!

あんまり色々頭で考えない質なのに・・・やっぱりここが見慣れたいつもの世界とは違うからかなぁ。





「あははっ!へーんな叫び声!
怒ってないから謝んなくていいよ~」


けらけらと笑って首を振るマーニャにこくこく頷く。


「ありがとう」

「いいえー。
疲れてるでしょ?早く部屋に行こう」


差し出された手を握った。

カサついた手は切り傷のようなものもある、働き者の手だった。


温かなそれは、ファミレスのキッチンでバイトをしていた菜乃花を彷彿とさせた。





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