それでも、幸運の女神は微笑む
そうこうしているうちに、一番奥の突き当りの少し前でマーニャが止まった。

向かって右側のドアを開ける。



「ここが私の部屋。
そんで今日からアサヒも仲間入り!」

大きな笑顔と共に、私はそこに招きいられた。



石造りの小さな部屋は、簡素な二つの寝台でほとんどのスペースが埋められていた。


右側の寝台の下には、しっかりした布でできた大き目の巾着が置いてある。

どうやらそこにマーニャの全ての私物が入っているようだった。





「ごめんアサヒ。
シーツとか枕とか諸々ほこりっぽいと思うんだけど、今日は我慢して!」


なんだかよくわからないけれど、必死に頭を下げるマーニャに慌てて首を振る。


「だいじょうぶ!」

「ありがとうアサヒ。突然のことだったから洗う暇なくてさ・・・いや、普段から洗っとけよって話なんだけど」



へにゃっと眉を下げて笑うマーニャに私はだいじょうぶと繰り返した。



「お詫びと言っちゃなんだけど、アサヒの体拭く用の水汲んでくるね!」

「ひょ?」

「あ、アサヒ井戸の場所って知ってる?
知らないなら一緒に来たほうがいいかも」

「いじょう?」

「わお。言葉からかー
いいや、実物見てもらった方が早い!行くよアサヒ!」

「じゃー?」




首を傾げている間に何やら決めたマーニャは私の手を取って再びドアを開けて歩き出した。




そして私は「井戸」が井戸であることを知り、ここでは水を得るためには井戸から汲むほかないのだと知った。

必然的に、日本人の大好きなお風呂もない。

・・・トイレって、どうするんだろう。


恥ずかしかったけど、知らないとヤバいと思って身振り手振りで聞けば。

用を足すための空間があって、そこの中央の土が縦長に盛り上げられていて一部に穴が空いていた。

土が盛り上げられた部分に座って、その丸い穴の中に落とすらしい。

で、溜まったそれらはいずれ肥料になる・・・と。



うん、まあ。許容範囲かな・・・?

というか、これしかないので、慣れないと!
慣れりゃイケる!!





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