それでも、幸運の女神は微笑む
私は頷いた。

「だいじょうぶ!」


昨日あんなに痛かった傷・・・噛み痕は朝起きたら随分と痛みが引いていた。

今も動かせばちょっと痛むけど、動かさないようにすれば至って平常だ。



「そうか」


安心したように笑ったムッシェさんは、部屋にある椅子を私に勧めた。



「これから診察しますので、愛し子様は朝食を食べにいってていいですよ。」

「わかった」


ムッシェさんに何か言われたラギアは部屋から出て行った。

そっか、わざわざ私を連れて来てくれたんだ。



「らぎあ!ありがとう!」


慌ててお礼を言えば、少し首を傾げた後、ラギアは静かに頷いて去っていった。




「さて。それじゃあちょっと診せてもらうよ」

「びゅん?」


服を脱ぐジェスチャーをするムッシェさん。

昨日の過ちはもう犯しません。人は学習する生き物なんで!

噛み痕を見るんですねオッケーです!!






で。


包帯を取ったら二人してぎょっとした。


なぜか?


左肩にあった噛み痕はきれいさっぱり消えていたからだ!



あれ?こんなすぐに綺麗に消えるもの?

では、なさそうだよなぁ。ムッシェさんの反応からして。


一緒にぎょっとしたからね!




「む、むっしぇ、これ・・・」

「ううーん・・・。愛し子様の話では魔狼に噛まれたってことだったはずなんだが・・・」


首をひねるムッシェさん。



すぐに傷跡が綺麗に治るなんて、女子的に言えばサイコー!なんだけど、素直に喜べない。


だって異常だ。あの痕が一晩経ったら消えてるなんてありえない。

確かに、寝る前には痛々しい痕があったんだから。




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