それでも、幸運の女神は微笑む
「本当に、すぐに治ってよかった」


言葉と裏腹に、辛そうなのはなんで?



「むっしぇ?」

「アサヒ。君はきっと何も悪くないのだろうね」

「びゅんー?」


呼ばれたことしかわからなくて、首を傾げる。

私の左手を握る力が強くなって、びっくりする。




「むっしぇ、いたい!」

「・・・痛みは、感じるのか。そうだよな、昨日もあんなに痛がっていた」

「むっしぇ!」


痛いってば!

意外すぎる。ムッシェさんは力加減間違えそうにないのに。


さっきまで全然間違えてなかったのに。





「視せてもらうよ」

「びゅんー?」

「君の再生能力がどれほどのものなのか」



優しい微笑み。

なのになぜか悪寒がして。


痛いって言ったはずなのに、左手を握る力は強くなるばかりだった。





「使えるなら使わせてもらうよ」

「む、むっしぇ?」

「・・・ごめんな」



謝るのなら、あの、早く左手を握る力を弱めてほしいんですけど・・・。

あと、何言ってるかさっぱりなんですけど・・・。





「アイナは嫌がるだろうが、愛し子様が良いとおっしゃれば問題はないだろう」

「ひょ?」

「大丈夫。
愛し子様は君に興味なんてないから」

「びゅみゅ?」



ムッシェさんが、笑った。

ぞわりと、する笑み。
さっき感じた悪寒が可愛いと思えてくるほどの。






「本当にごめんなアサヒ。
私はあいつらに必ず報いを与えなければならないんだ」




その目には、確かに、狂気が宿っていた。





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