それでも、幸運の女神は微笑む
ラギア歩くの早いっ!

脚が長いから当然だけど!私との長さの差に泣けるね!!



「・・・ごめん」


小走りでついていく私に気づいたラギアが歩く速度を落としてくれた。

私はふるふると首をふる。

ムッシェさんの歩く速さも私には早かったから、きっとこの世界の人たちにとっては普通の速さなんだと思う。



「ありがとう」


だから、私に合わせてくれたことに感謝だ。

ここでの普通を私の普通に合わせてくれたんだもん。



にーっと笑えば、ラギアは静かに頷いて。

私に合わせたゆっくりとした速度のままで歩いてくれた。



全然表情が変わらないから冷たいようにも見えるけど、ラギアは優しい男の子だ。


私を助けてくれて。

私に念話で色々伝えてくれて。

異世界言語を教えてくれて。

そして何より、私を信じてくれた。



命の恩人で、心の恩人。


情けないけど、私は今、年下の男の子にとことん助けられている。




「らぎあ」

「なに」

「ありがとう」

「・・・・・・うん」



ああ、何か返せないかな。

ありがとうと言うことしかできないなんて、もどかしいな。苛立たしいな。


なんで私、なんにも持っていないんだろう。




「アサヒ」

「ひょ?」

〈気にしないで〉


神々しい黄金の瞳は、なんの感情も映さない。



〈ただの気まぐれだから〉



頭の中にひどく冷たい意思が響いて。

目を、瞬いた。





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