それでも、幸運の女神は微笑む
愕然としていると、ムッシェ・ハインドさんが柔らかく笑ってちょいちょいと再び自身を指差した。


「ムッシェ、ムッシェ」

「むっしぇ?」


頷くムッシェさん。

ムッシェって呼んでいいってことかな?


私も自分を指差して言う。


『旭』

「アサヒ?」


こくんと頷けば、ムッシェさんは少し首を傾げた。


「ムッシェ・ハインド、アサヒ・トダ?」



ん?どういうこと?

首を傾げれば、ムッシェさんはむむっと唸って言い直す。


「ムッシェ、アサヒ。ハインド、トダ。
ムッシェ・ハインド、アサヒ・トダ?」



んーー?

ムッシェが旭でハインドが戸田ってこと?を、聞いてる?


ええっと、つまり・・・・・・戸田は名字かってこと?かな?


私は辺りをつけてうんうん頷く。

そういえば外国ではファミリーネームは後ろだった。



ムッシェさんは伝わったことに微笑みながら頷いた。



「アサヒ」

呼びかけて、彼は自分のお腹を指差してつつーっと口元まで指を動かして、口を開けて舌を出した。

そして問いかけるように首を傾げる。


吐き気はあるか、かな?


私は頷く。

目が覚めてからずっと気持ち悪い。あと左肩が痛い。じんじんする。




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