それでも、幸運の女神は微笑む
「ラギア、おしえる、たくさん!ありがとう!」

「ん」


延々と名前を繰り返すという苦行を無表情で遂行してくれたラギアに感謝を!

・・・ごめんねラギア!!!



「アサヒっていい奴なのか怪しい奴なのかわかんねぇな」

「阿呆っぽいのはマジなのかウソなのか・・・限りなくマジっぽいけど」

「ラギア!ロイ、ロッチェ、いう、なに?」

〈アサヒって阿呆っぽいねって〉

「ぎゃぴーーーー!!!」

「うわっ!?ちょ、愛し子様何言ったんですか!?」

「わわっ!?なんで荒ぶってるのアサヒ!?」


阿呆っぽいとは!許すまじ!

阿呆じゃないし!秀才でもないけど!
阿呆じゃないし!!


机の反対側に、最近切るのを忘れていた長めの爪を振りかざす。

両手を挙げて凶器の爪を二人の顔に突き立てようとしたところで。



「おやおや。可愛らしいお嬢さんですねぇ」


おっとりとした声が聞こえて、ぴたりと動きが止まった。

ぱちりと瞬きして声が聞こえた方を見れば。


お腹がぼよよんと膨らんだ、なかなかにふくよかなおじさんが私のすぐ隣に座っていた。

口元のくるんとしたお鬚がオシャレです。



おじさんはにこにこしながら、私に言う。


「可愛らしいお嬢さんですが、見ない顔ですねぇ。
どちら様でしょう?なぜ私が知らないのでしょうねぇ?」



・・・にこにこしてるのに、なんで寒気がするんだろう。




< 77 / 153 >

この作品をシェア

pagetop