それでも、幸運の女神は微笑む
「アサヒ」

「びゅん?」

「食べないと、冷めるよ」

「たべる、さめる・・・うん!たべる!ありがとうラギア!」


笑えば、ラギアが頷いてくれて。

フォークで刺したお肉はまだ温かくて。


「おいしいー」



へにゃっと目尻が下がってしまう私に、ロイとロッチェが気付いてけらけら笑った。



「幸せそうだなぁ、アサヒ」

「アサヒってけっこう食い意地張ってる?」

「「間抜け顔になってるぞー」」


向かい側から、頬をそれぞれつつかれる。

子供のような扱いにむっとすれば、二人は更に楽し気に笑う。


「アサヒ顔に出すぎ」

「ちょっとは隠せー」

「びゅむー!!!」

「「何言いたいかわかんねぇー!」」



怒りの呻き声さえもケラケラ笑われた私は、怒っているのが馬鹿らしくなって。

つられるように、笑ってしまった。




いいなぁ。

なんか、いいなぁ。


今日はちょっと冷たいような雰囲気になったことが、けっこう多かったから。

こういう、誰かと笑い合うっていう心地いい時間が、すごくいいと感じる。




「ロイ、ロッチェ」

「あ?」

「うん?」

「ありがとう」



楽しいって、言えないから、せめて感謝の言葉を。


そう思って言った言葉に、二人は首を傾げた。



「「なんで?」」

「へへへ」

「愛し子様ー?」

「どういうことですかー?」

〈アサヒ、どういう意味〉

『楽しいから、ありがとうって!』

「楽しいからだって」

「は?」

「え?」


きょとんと二人は顔を見合わせて、ぶはっと噴き出した。




「なんだそれぇ~?」

「変なのー!」


軽やかな笑い声。

首を傾げた私の頭に、ぽんと柔らかな感触がして。


見れば、のほほんと笑うボルダさんがいた。




「・・・おかわいそうに。
何も、わからないのですね」



静かに紡がれた言葉の意味がわからなくて、首を傾げたけれど。

誰も、ラギアさえ、教えてはくれなかった。






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