それでも、幸運の女神は微笑む
それはさておき敵のことだ。

マーニャまで困らせるなんて・・・卑劣な!


「マーニャ!どうしたの?」

「アサヒ!正しく言えてる!すごい!」

「ぶへへへへ」

「照れ方が残念・・・」


マーニャさんマーニャさん。

なんでそこでしょんぼりするの?


「どうしたの?」

「えーっと「マーニャ!早く!」ふあいっ!」


奥からガペラさんの鋭い声が響いて、慌ててマーニャはピンと背筋を伸ばした。



「ごめんアサヒ!私雑巾を貰いに行かなきゃだから!」


またね!とぶんぶん手を振ってマーニャは風のように駆けて行った。

マーニャ、速いね・・・。


私がマーニャの走りっぷりに拍手をしていると、ラギアがポツリと呟いた。


「雑巾がない・・・」



なんだか考えているような声に、そういえばと声をあげた。


『滑った雑巾は一応通路の端に置いておいたけど、集めてどこかに届けた方が良かった?』

〈ん?うん・・・あまり関係ないと思う〉

『関係ない?』

〈うん。どちらにせよ、なくなってただろうから〉

『なくなる?』


どういうことかと聞く前に、ラギアは静かに淡々と、ロイ、ロッチェ、ボルダさんに言った。




「間諜が紛れ込んでる」



分かる単語が何1つなくて、私はどういう意味かわからなかったけど。

ロイとロッチェはニヤリと不敵に微笑み、ボルダさんはふわふわと笑った。


3人の瞳には、ひどく冷たい光が宿っていた。




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