それでも、幸運の女神は微笑む
あまりにも怪しいので、私は思わず凝視してしまった。


怪しいその人は、肩に乗った小鳥の頭を人差し指で撫でて、顔を上げ––––––



––––––ばっちり私の方を見た。



目が隠れているから見えているのかはよくわからない。

が、もし隠れていなかったら目が合っていたかもしれない顔の向きだ。




一瞬の膠着。


後、その人物は口角を上げて、口元に笑みを作った。




そうして、その見た目に反して朗らかに言った。


「こんにちは、お嬢さん。今日はいい天気だね」




「こんにちは」「今日」「いい」しか分からなかった私にもわかるほど友好的な明るく弾んだ声。

声の低さから男の人らしいことはわかった、けど。


本当にあなた何者です?




「こ、こんにちひゃっ・・・」


しかし悲しいかな。

挨拶されたら挨拶し返してしまうのが私。


ん?最後声が裏返ったような?

・・・気のせいだね!




「おや、緊張しているの?
ふふ、可愛らしいね」


なんで笑ってるんでしょうか・・・。


「安心して良いよ。
僕は怪しい者じゃない」


「いい」「僕」しか分からなかった私の言語能力に拍手!

・・・涙がちょちょ切れそうです。



「さっきから、だんまりだね。
警戒している?それとも」


唐突に彼が言葉を切って。

静かに息を吸い込む音がした。



『伝わっていなかった?』






その、言葉は。



『な、んでっ・・・』





慣れ親しんだ、日本語だった。





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