それでも、幸運の女神は微笑む
『アサヒは、朝の光のことだよね』


確かめるように言う彼に、頷く。


『うん。だけど私の字は、普通に書く朝日と違って・・・こう、書くの』


宙に旭と言う漢字を指で書く。


『漢字の九に日光の日で、旭』

『へえ。普通の朝日とどう違うの?』


漢字わかるかな?と思ったけど、夕日はあっさり理解した上で首を傾げた。

私は、お母さんから聞いた言葉を思い出しながら言った。



『私の漢字は、押さえつけたものをはねのけて光が地平線に出て輝くのを表してて』


––––だからね、旭。あなたの名前はね・・・


『どんなことにも屈せず、行きたい道を突き進むっていう意味が込められてる』





そうだ。

鼻の奥がツンとするのを感じた。

そうだ。

グッと歯を食いしばって嗚咽をこらえた。

そうだ。

目に力を入れて涙がこぼれないように努めた。



そうだ。

私は、私は旭だ。


だから。




『・・・したいようにする』

「へ?」


間抜けな声を出してキョトンとしている夕日に、満面の笑みを向けた。



『ありがとう夕日!
私、どれだけ厳しくても諦めないね!』

『う、うん?いきなりどうした?』

『私は旭だから!夕日がそれを思い出させてくれたから!』


だから、と言って続けた。

真っ直ぐに彼の目を見て。



『私、帰る方法を見つける』





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