それでも、幸運の女神は微笑む
断固として主張を変えない私に、夕日はため息を吐いた。


『頑固だなぁ。まあ、アサヒがそれでいいならいいか』



そう、夕日が苦笑したときだった。






「きゃあああああああ!!!」


すぐ傍・・・食堂の方から悲鳴が響いた。




『な、なにっ!?』


慌ててそっちに駆けて行こうとした私の手を、痛いくらいに夕日が掴んで止めた。



『駄目だよアサヒ』

『え?』

『死にたくないだろう?』




優しい声で紡がれた言葉に、息をのむ。




『しぬ・・・?』

『おいでアサヒ。僕と一緒に行こう?』

『え、なんで、わ、わたし』

『ここは危険だよ』

『危険?
で、でもっ・・・』



ムッシェさん、アイナ、ムム、マーニャ、ラギア・・・優しくしてくれた人たちの顔が浮かんでは消える。




『私、ここの人たちに、救われたの!』



訳が分からなくて、どうしようもなかった私に、言葉を教えてくれて、衣食住を与えてくれた。

私に笑いかけてくれた。

私を疑う人もいたけど、それは当然の反応だ。



何より。



私の命の恩人で、私を信じてくれたラギアがいる。


勝手に出ていくなんて、そんなの裏切るのと一緒だ。




だから。

『私は、ここにいる。
ううん、ここにいたい!』




夕日と一緒には行けない。





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