それでも、幸運の女神は微笑む
由緒正しいフリーフィア侯爵家嫡子。

順当に行けばフリーフィア侯爵となり、賢い彼は特に苦労もなく幸せに暮らせたと言うのに。

フリーフィア侯爵家はきちんと貴族の責務をしていたのだから。



それなのに。



––––お傍に置いてください。貴女の、傍に。






明日生きてるかさえ怪しい革命軍にいるだなんて。

しかも女装までして。




わたくしを愛してしまったがために、廃嫡を厭わず危険に身を投じるエリオット・ヴィオ・フリーフィア侯爵子息。

幸運だったのは現当主が革命軍に賛同して協力してくださっているということ。


それでも、大事な長男を危険な場所に向かわせたくはないと言葉にはせずとも伝えてくる。

わたくしはそれを、知っていながら無視する。




使えるものは最大限利用する。

弱みも、恋も、憎悪も、愛も、全て。


偽って、偽って、偽って。

もう何が真実かさえわからないほどに偽って。


そうしてわたくしは苛烈な革命者として立つ。





目指すは革命王。

アグネシア史上初の、女王。


求めるは王族の首。

血族の死。








だから。




––––コンコン

「アイナ、入ってもいい?」




瞬きの間に夢の名残を消し去って、今日もわたくしは笑う。


どこまでも不敵に。
鮮やかな赤薔薇のように。





「勿論ですわ。どうかしまして?ロッチェ」




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