薔薇姫《短編》
「それでは、願いをかなえてやろう」


魔術師は眠る姫をのぞきこむと、なにやらしばらく考え長くとがった爪で姫の頬をやさしくなでていました。

やがて、黒いマントの影から見える口がにんまり笑うと、

呪文を唱えることもなく、おもむろに身をかがめると姫の真っ赤な唇を奪いました。


覚悟はしていたものの、呪いの解ける痛みにそして魔術師への嫉妬の痛みに薔薇達は大きく身体を震わせました。


「さあ、姫よ、薔薇の契約の通りにくちづけによって目覚めの時が来た」

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