薔薇姫《短編》

白い薔薇

魔術師の声が聞こえたのか、長いまつげをふるわせながら、少しづつ姫のまぶたがあがり、宝石のような輝く瞳が現れました。



姫が目を醒ました時、その瞳が最初に映したのは、薔薇達が最後の力で咲かせたとても美しい一輪の白い薔薇でした。

そして、数百年ぶりに姫の口から
「なんてきれいな薔薇」
と言葉が洩れ、

そして、手をそろりと伸ばし、雪のような花弁に触れました。



薔薇達の薄れゆく意識は最高の喜びに満たされ、そして城を囲み、這い回っていたいばらは全て塵になってしまいました。

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