薔薇姫《短編》
やがて、長い間眠り続けていた部屋に戻ってきた姫は、
寂しさと悲しみに打ちひしがれ、オーレンにすがりつきました。

涙に濡れて光るまつげを震わせながら、
「どうしてこんなことに。
私も一緒に滅んでしまえばよかったのに」
そう嘆きます。


オーレンは、この美しい姫をやさしく抱きしめながら
静かに問いました。


「そんな悲しい顔をなさらないでください。
どうぞ、私に笑顔を向けてください。

これからは、私が美しいあなたの側にいることを約束しましょう。
これ以上寂しくならぬように。

おお、そうだ。
私は、人の望みを叶えることが喜び。

姫の願いをひとつかなえてさしあげましょう。
あなたの望みは?
永遠の美しさ?
それとも富?
全てのものからの愛?

死んだものを生き返らすことはできないが、
あなたの望みをおっしゃってください。

私は、あなたをひと目みた時から、
あなたの笑顔を見たいと思っていました」


姫君は、オーレンの言葉に悲しげに首を振りました。
胸の中には、悲しみと絶望しかありませんでしたから。


姫君は、目覚めて最初に目にした薔薇に目を向けました。
しかし、既に滅びて塵になりそこにはありません。
ですが、姫の目にはあの白い薔薇の美しい姿が映っていました。

「...薔薇にしてください。
そう、私の大好きだった、白い花をつける薔薇にしてください。
いつまでもこの城の側にいられるように」



魔術師オーレンは、寂しげな眼差しで姫を見つめながら、
杖を振り、呪文を唱えました。
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