黙ってギュッと抱きしめて
お揃いの指輪を買ったのに、なかなかつけない遥が気になっていた。それなのに。
「ネックレスとか、そういうアクセサリー、…つけるタイプじゃないじゃん。」
「だって、これは常に身につけてたいから。」
熱でだるそうなのに、目だけは真っすぐだから困る。
「ってごめん、今そんな話してる場合じゃなかった。シャツ持ってくる。あとタオルね。濡らしてくる!」
指輪のことは今じゃない。まずは遥の体調を戻すことが優先である。翼は一番上にあったシャツを手に取り、タオルをお湯で濡らした。
「身体冷えちゃってない?大丈夫?」
「うん。」
「身体、拭くよ?」
「…うん。」
静かな部屋に、呼吸の音だけが聞こえる。遥は目を閉じたまま、じっとしている。何度も見たことのある身体のはずなのに。緊張している場合ではないのに。
「…はは、手、震えてるけど翼も風邪?」
遥は確かにいつも優しく笑うけれど、こんな風には笑わない。気が抜けているのか、熱でおかしくなっているのかわからないけれど、初めて見る姿にまた心臓が変な方向に音を鳴らす。
タオルを持つ翼の手を遥の手が優しく包む。翼は思わず顔を上げた。
「はる…か…?」
「ありがとう、翼。夢…見てるみたいなんだよ、さっきから。」
「ゆ…め…?」
「うん。」
遥の頭がまた、翼の肩におりてくる。
「…はる、か?」
「着替え、ちょうだい?」
「あ、待って背中…拭いてないし。」
「そっか。」
ゆっくりとした動きで遥は翼に背を向けた。背中を拭き終わって、声を掛ける。
「背中終わり!」
「ありがとう。」
「あと首と顔も。こっち向いて?」
「ん。」
向き直った遥はまだ、ぼんやりとした目で翼を見つめている。視線は感じながらも首筋にタオルを当てた。そして最後は額の汗を拭く。
「よしっ!あとべたべたするところある?」
「大丈夫。ありがとう。」
「着替え手伝う?」
「大丈夫。ちょうだい?」
「うん。」
翼は用意していた着替えを渡して、タオルを洗いに洗面台に戻る。
(…うー…緊張した…っ…。)
火照っているのは、風邪のせいじゃない。それは絶対に。
「ネックレスとか、そういうアクセサリー、…つけるタイプじゃないじゃん。」
「だって、これは常に身につけてたいから。」
熱でだるそうなのに、目だけは真っすぐだから困る。
「ってごめん、今そんな話してる場合じゃなかった。シャツ持ってくる。あとタオルね。濡らしてくる!」
指輪のことは今じゃない。まずは遥の体調を戻すことが優先である。翼は一番上にあったシャツを手に取り、タオルをお湯で濡らした。
「身体冷えちゃってない?大丈夫?」
「うん。」
「身体、拭くよ?」
「…うん。」
静かな部屋に、呼吸の音だけが聞こえる。遥は目を閉じたまま、じっとしている。何度も見たことのある身体のはずなのに。緊張している場合ではないのに。
「…はは、手、震えてるけど翼も風邪?」
遥は確かにいつも優しく笑うけれど、こんな風には笑わない。気が抜けているのか、熱でおかしくなっているのかわからないけれど、初めて見る姿にまた心臓が変な方向に音を鳴らす。
タオルを持つ翼の手を遥の手が優しく包む。翼は思わず顔を上げた。
「はる…か…?」
「ありがとう、翼。夢…見てるみたいなんだよ、さっきから。」
「ゆ…め…?」
「うん。」
遥の頭がまた、翼の肩におりてくる。
「…はる、か?」
「着替え、ちょうだい?」
「あ、待って背中…拭いてないし。」
「そっか。」
ゆっくりとした動きで遥は翼に背を向けた。背中を拭き終わって、声を掛ける。
「背中終わり!」
「ありがとう。」
「あと首と顔も。こっち向いて?」
「ん。」
向き直った遥はまだ、ぼんやりとした目で翼を見つめている。視線は感じながらも首筋にタオルを当てた。そして最後は額の汗を拭く。
「よしっ!あとべたべたするところある?」
「大丈夫。ありがとう。」
「着替え手伝う?」
「大丈夫。ちょうだい?」
「うん。」
翼は用意していた着替えを渡して、タオルを洗いに洗面台に戻る。
(…うー…緊張した…っ…。)
火照っているのは、風邪のせいじゃない。それは絶対に。