黙ってギュッと抱きしめて
「…風呂入るとき以外、外してないよ。職場にもつけていってる。どうせワイシャツで見えないし。」
「私よりも長い時間つけてる!」
「そうだよ。だから、翼だけが嬉しいとかあるわけないんだって。…大体、俺の方が絶対嬉しいし。」
「…なに?」
「なんでもない。」

 最後だけ、よく聞き取れなかった。

「何て言ったの?」
「内緒。」
「ってごめん、いっぱい喋らせた!また身体熱くなってきた!寝て!」

 遥の腕を解いて、ベッドから立ち上がる。そして肩をゆっくりと倒す。

「…帰んないよね。」
「当たり前。遥がよくなるまで、ちゃんといるよ。」
「…翼。」
「んー?」
「一緒に暮らそうか。」
「ん、いいよ。」
「…このまま翼がいてくれたらな、って…今思っちゃった。」
「私も、家がここだったらなーって今思った。」

 翼はそっと遥に近付いた。そして頬に小さくキスを落とす。

「だから、そんな心配そうな顔しなくて大丈夫だよ。新しい家とかそういうのは、遥が治ってから考えよう。今はちゃんと治すのが一番大事だからね!」
「ん。」

 赤くて、熱くて、ぼうっとする。そんな顔を隠したくて遥はそっと布団のもぐりこんだ。

(…かなわない、いつだって。翼には。)

*fin*
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