偽りの愛言葉
適当にチャンネル回して、食パンをトースターにセットする。


待ってる間は、クリちゃんの遊び相手。


「本当猫じゃらし好きなぁ。」


ネズミの猫じゃらしを、交互に揺らすと戯れてくる。


こんな独身生活。ダメなのかな。


俺自体は恋愛とか求めないから、独りに不満はねぇけど。


でも。


テレビの奥の家族みたいに、温かい家庭に憧れたりはするんだ。


でっかいテーブルで孤独に食べるよりも、温かいんだろうなって。


一応、俺だって母さんと父さんと妹と温かい暮らしに築けてた。


確かに賑やかな声が幸せの証だったっけ。


……って。


何を言ってる、俺は。


「トースター!!!」


すっかり忘れてた……。


案の定、真っ黒に焦げてる。


ま、いいや。食べよう。


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