偽りの愛言葉
「もう梓と逢わないでください。」

「は?何で他人のお前に言われなきゃなんないの。」

「他人じゃないです。俺、梓のこと本気で好きなんで。」

「ちょ、風神さん…!」


慌てて、俺の腕を引っ張る君。


「言っとくけど俺たち付き合ってるから。」

「それって過去形じゃないっすか?」

「…っ、帰る。」


悔しそうに唇を噛み締めると、店内から姿を消した。


「ハァ…」


一気に緊張が解けて、地面にしゃがみ込む俺。


「風神さん…」

「へへ、ごめんね。勝手に。」

「ちょっとだけ嬉しかったです…さっきの。」


やっと笑った。



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