チョコミントの奇跡
急に思い立ってしまったから、ケーキを入れるちゃんとした箱がない。
会社の昼休みに百均ショップへ買い物に行く事にして、今はとりあえずサイズの合うお菓子の空箱にそのケーキを慎重に入れた。
昼休みまでは、この状態でロッカーの中に入れておけば大丈夫。
私はそのケーキの箱を紙袋に入れて、人にぶつからないよう注意しながら会社へ向かう。
まずは、満員電車の難関を突破して、会社の最寄りの駅の改札口を抜け、階段を上りやっと地上へ出た。
とにかくこの人混みを抜け出さなきゃ…
私がやっと駅前の人だかりから抜けてちょっとした空間に出てきた時、その非常事態は起こってしまった。
ドスン!
あっという間の出来事だった。
よりにもよって、私の右手に誰かがぶつかった。
私が大切に抱えていたチョコレートケーキは、無残にも二メートルほど先の緑の植え込みに飛ばされた。
「す、すみません!」
私にぶつかった体の大きな男性のサラリーマンは、血相を変えてその飛ばされた紙袋を取りに走った。