駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
そして待っている間に店内を見渡し、楽し気にくつろいでいるお客さん達を眺めているのもいつもの事。
ビールを一口、二口と喉に流しているとでできたメニューに、笑みがこぼれる。
海老とアボカドのカナッペに、サーモンのマヨカルパッチョ、オニオンリング、生ハムのサラダがワンプレートで出てきた。
「さすがわかってる」
「毎回同じ物頼んでれば覚えるよ…理沙スペシャルだ」
フッと笑うマスターの目尻にシワがよる。
んー、渋い!
昔は、さぞかしモテたんでしょうね。
心の中で呟いきながら、どれから食べようか迷ってしまう。
「いただきます」
「後で、デザートも出してやるよ」
「わぁ、嬉しい。ありがとうマスター」
マスターは、次々と入るオーダーに取り掛かりながら、ぶっきらぼうにそう言うと目の前から去っていき、私は、目の前のご馳走を堪能していた。
毎週、食べているけど全然飽きないわ。
グラスに残っていた一口分のビールを最後に飲み干した頃、頼んでもいないカクテルを持って誠がやってきた。
「向こうのお客から…」
面白くない顔をして誠が男性を顎でしゃくる。
その男性を見ながら頭を少しだけ下げれば、席を立ち近寄ってきた。