駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて

誠は、男からの敵意ある視線に理由がわからなかった。


「彼女は理沙と君に名乗っているのか?」


はあっ?


突然、声をかけられ意味のわからない事を言う男に首を傾げる誠。


「いや、いいんだ。気にしないでくれ。君と彼女の関係を聞いてもいいか?」


失礼な男の態度にムッとしながらも、店の客だと思い言葉を返した。


「店の店員とお客ですが、近々彼氏に立候補するつもりです」


「立候補?見たところ君の方が若くないか?」


「確かに年下ですが、恋愛に年齢なんて関係ありますか?」


「…」


返す言葉がなく、黙ってしまう男に誠は詰め寄る。


「あなたこそ、理沙とどう言う関係ですか?」


理沙の態度の変化がこの男にあるのではと睨んだのだ。


「相思相愛の仲だ」


はあっ?と何度も瞬きをする誠。


「嘘だ」


「1人で遊ぶ時は理沙と名乗っているようだが…里依紗は俺の女だと会社中が知ってるぞ」


「理沙、いや、あなたが言う里依紗どちらでもいい。俺は毎回会う度に、片想いしている男の愚痴を聞かされていたんだ…」


それでも認めたくない誠は、ある事に気がつく。


「あなたは今日、理沙以外の女性といましたよね」
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