駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
やっと手に入れた!
キスを深めながら、男はキスに蕩ける表情をする彼女を見つめ、歓喜に沸いていた。
だからなのか、朝から歯止めがきかない。
ここが会社だという事も忘れたのか、彼女の腰を抱きしめ密着する服越しに肌を撫でる始末。
キスの合間の荒い息遣いも、惜しい。
もっと…もっと…
胸を叩く手に気がついた時には、彼女は腕の中で崩れていた。
おっと、と、抱き上げて、やっと自分が冷静でいなかった事に気がついて、真っ先に見たのは防犯カメラだった。
まぁ、向こうは見て見ぬ振りだろう。
だが、里依紗のこの色っぽい表情は誰にも見せたくないと胸に彼女の顔を抱き寄せ隠していた。
里依紗の呼吸が落ち着くまでの時間、幸せだった。
「…離してください」
腕に抱くつれない彼女が、上目遣いに睨んでくる。
幸せな時間は終わりらしい。
口をへの字に曲げて、手を離した。
「会社で、辞めてください」
「会社以外ならいいのか?」
俺を睨むかわいい顔が、自分のものになったと思うと愛しくて仕方がない。
また、その唇に触れたいと一歩近寄り手の中に囲いながら、彼女の唇を指先で撫でていた。