駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
そして、またメールが届く。
仕事しろよと悪態をつきながらも、来たメールを開いた。
『何を考えていた?ちゃんと仕事しろよ。今日は、残業は無しだからな』
チラッと彼を見れば、澄まし顔でいる。
仕事中に、私用メールをしてくるあなたには言われたくないと、呆れて返事を返すのも面倒になり、来たメールを全て削除した。
それから、無駄に過ぎた時間を取り戻す為に、昼食も簡単に済ませ仕事に没頭していれば、終了時間になる。
すると、珍しく部長がパソコンの電源を切り、みんなを急き立てるように声をかけた。
「今日は、急ぎの仕事がないなら帰って有効に時間を過ごせ。そして、明日から、また馬車馬のように働いてもらうぞ」
みんな戸惑いながらも、なぜか急ぎの仕事がないらしく『お先に失礼します』と足取りを軽くして出て行った。
広報室に残された私と部長。
突然の2人きりに耐えられなくて、無我夢中でデスクの上を片付けパソコンの電源を切れば、背後から手が伸びてきて抱きしめられていた。
「里依紗」
突然、抱きしめられて硬直している体の耳元に、蕩けるようないい声で名前を呼ぶ男は、朝の忠告を忘れたようだ。