駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
駆け引きは2人の間を甘く染める
「ふふふ、小悪魔は嫌ですか?」
「俺だけにしろよ」
私のおでこをチョンと指先で小突いてクシャッと笑う男に、ドキドキとさせられる。
でも、そんな自分を悟られたくない。
「…契約が切れるまでは、部長限定です」
そんな日が来なければいいのにと、笑顔を貼り付けて見つめる。
「契約が、切れるまで…俺は里依紗以外の女には必要以上に話かけない。思わせ振りな態度もとらない。だから、お前も他の男には…」
目を彷徨わせてから、視線を合わせて見つめてくる男。
「俺以外の男には…冷たくしろ」
「ぷっ、ふふふふふふふ。冷たくしろって、考えてそれですか?」
「そうだ。今まで俺には無表情でつれない態度でいるくせに、他の男には愛想よく食事に行ったりしてただろう。まぁ、二、三回食事に行けば次の男に変わっていたけどな⁈」
冷ややかになる声に、軽い女だと言われているようで胸が痛くなった。
確かに、食事に誘われて2度3度行った事がある男性は何人かいるが、相談したい事があると言われれば断れない。だが、どの人も相談というのは建前で下心がちらつき、気のない態度を取っていたらそのうち諦めていった。