駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
彼はその現場を見ていたから、事情も知らないで言っているのだろう。
だから、部長は前にあんな事を言っていたのだ。
『男のサイクルが早い』と…
そう言われて否定も肯定もしなかった自分が悪いのだけど、それは彼を好きな気持ちを知られたくなかったからで、今になってそんな目で見られていたのかと傷ついているなんて…
『後腐れのない女』
彼が望んでいるのはそういう女性。
それなら、私は演じるしかない。
彼が望む女性に…
契約が切れるまでの関係でも、彼女でいれるなら演じきろう。
「わかりました。彼女でいる間はプライベートでは部長以外の男性には愛想よくしません。ですが、仕事中は色々と仕事に影響するので今まで通りでいいですよね?」
「…そういうところ…里依紗らしくて好きだよ。だけど、折角の同じ職場で働いているのにオフィスラブを楽しまないなんてつまらない。2人きりになった時は恋人気分を味わいたいって事で」
…好きだよと、脳内を何度も彼の声がリフレインして油断していた隙に、グイッと体を強く抱きしめられ唇を塞がれていた。
乱暴な抱擁と違い優しく唇を味わうようなキスは、上唇、下唇と、何度も交互に食んでから離れた。