駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
これ以上、彼に惑わされない為にピシャリと、線を引く。
そして、丁度エレベーターが止まりドアが開くと、気だるそうに首を回しながら廊下へと出て行く後ろ姿を追いかけるのもいつもの日常で、彼がどんな表情をしているのかなんて、知る由もない。
広報室の部長の席につけば、仕事スイッチが入るらしく、先程までのチャラついていた男はどこにもいない。
そこにいるのは、仕事のできる男。
本当に、罪な男だ。
彼の行動一つ一つに振り回される女がここにもいるなんて知らないのだから…
いつの頃からかなんて覚えていないが、気がついたら
彼の笑顔に振り回される女達と同じように、彼にいいように弄ばれている。
弄ばれていると言ったら語弊があるかもしれないけど、愛を信じない男の思わせぶりな言葉や態度に振り回されているのだから、弄ばれていると言っていいと思う。
なぜ、彼は愛を信じなくなったのかは知らないが、そんな女達を見て楽しんでいるのだから…性格が悪い。
そんなどうしようもない男を好きになってしまった私は、バカだと思う。
彼の見た目や肩書きに惑わされている彼女らの方が、夢見がちでいいのかもしれないが、私は、彼の本性を知っても嫌いになれないのだから、本当にバカだ。