駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
まったく理解できない行動に、彼の唇から離れようと手首を引いたがビクともしない。
その間も、手首の周りを好き放題に食んでいて、触れられた場所がジクジクと疼いている。
「気に入らないんだよ。俺以外の男が里依紗に触るなんて許せない」
まるで本当の恋人のように嫉妬している様子が嬉しくて頬が緩んでしまう。
「何、笑ってるんだ。まぁ、笑っていられるのも今だけだけどな」
その凶悪な笑顔にただならぬ予感しかなく、悪あがきをしてしまうのは2人の関係性が本物じゃないからだろう。
「あの…ここって」
「あぁ、最初たただ、上のバーで恋人らしくデートしようと思って連れて来る予定だったんだが、途中、無自覚に煽り、そのくせなかった事にしようとする里依紗を凝らしめるつもりで部屋を取ったが、目を離した隙によその男にチョッカイをかけて油断できないってわかったんだよ。だから、今すぐ里依紗を俺のものにするって決めた。取って正解だったな」
彼が言う無自覚に煽り、なかった事にした記憶はないが、チョッカイをかけた方ではなく、かけられた方なのにと反論したかったが、聞き捨てならないセリフと甘く艶めいた表情をする彼に思考も体も甘くとらわれていった。