駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて

そもそも、そのうるさい彼女達に笑顔を振りまき愛想よくしているのは、誰よ。気のないくせに思わせぶりに声をかけ弄んでいるのに、うるさい女とは酷い事を言う。


まぁ、悪態をつくのはいつものことなのでスルーして、今は彼に構っている暇はないのだ。


急いで衣類を身につけて、鏡台の鏡を覗き手ぐしで髪を整えながら、剥がれた化粧が許せる範囲内である事にホッとして鞄を探した。


記憶を辿って室内をキョロキョロしていたら、ベッドの上体を起こした彼がヘッドボードに背を預け、手には見慣れた鞄を持っている。


「あっ…」


駆け寄り、鞄を掴もうとした手が宙を泳ぎ、私は勢いあまって彼に抱きついてしまった。


「りいさから抱きついてくるなんてうれしいよ」


あっという間に腰を抱き寄せられ、横向きに彼の膝の上…


もちろん、直接ではなく肌がけふとんの上だが、膝抱っこなんて恥ずかしくてたまらなずに何度も起き上がろうとするが、胡座をかいた隙間にすっぽりとお尻がはまっていて抜け出せないのだ。


「遊んでいる時間なんてないんです。離してください」


「心外だな…自分から抱きついて来たのに」


「それは…鞄を取ろうとして…って、部長が意地悪しなかったらこんな事になってません」
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