駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
「…きつい事を言うな」
傷ついた表情に、言い過ぎだかもと反省し言い訳を探した。
「えっと…言い方がきつかったなら謝ります。私も本当は部長とまだ一緒に、いたいんですけども…服もシワができてますし、私も女なので化粧も下地から直さないと恥ずかしくて出社できないって思ったので…言い方が悪くてすみません」
こちらも本当の事だが、内心思っていた事を言う訳には躊躇われて言えなかった。
「…そうだよな。突然だったし仕方ない…うーん、今度は泊まる準備をして俺んとこにおいで…」
甘くとろける笑顔に、よしよしと頭を撫でられる。
うわっ…やばい。
仕事場では絶対見る事のない笑顔と、親密でないとできない頭なでなでは、彼女というポジションにいる特権だった。
幸せすぎてキュン死してもいいかもなんて思ってしまう。
真っ赤になっているであろう顔、頬が熱くてたまらず両手で頬を冷やした。
「りいさ?…聴こえてる?」
コクコクと頭だけで何度も頷いた。
「約束だぞ!」
ぎゅっと体ごと抱きついてきて、おでこにチュッとキスが落ちた。
付き合いたての恋人同士みたいだ…
頭では、勘違いしちゃいけないとわかっているのに、心は勝手にときめいている。