駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
顎を掴み、持ち上げた顔を覗く悪い笑み。
彼女らは、彼のこの裏の顔を知らない。
きっと彼の言うように明日にはまた、彼の側に寄り添う彼女の座を夢を見るに違いない。
「言わずにいてくれた事は感謝しますけど、あんな言い方だとファンがいなくなりますよ」
「心配してくれてたのか⁈」
まさか…と顔を横に振った。
逆に、彼の本性を知ってみんないなくなればいいと思っている。
そうすれば、彼の側にずっと…
いや、それはない…か。と自嘲する。
「相変わらずつれないな…まあ、りいさのそういうところが好きだったけど、ベッドの中での素直なりいさが一番好きになったよ」
好きと言われ、嬉しくなる。
緩みそうになる頬を引き締め、勘違いしないようにと叱咤している側で、昨夜の行為を匂わせるセリフに真っ赤になりながら
「思ってもいないくせに」
「どうしたら信じるんだ?」
「信じるも信じないも、私達の関係にリップサービスなんていりません。いつかは終わるんですから…」
「…そうだったな」
自分が言った事に悲しくなる。そして眉間に皺を寄せながら抑揚のない優也の声色に何故だかショックを受ける。