駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
幸せだった数時間前が嘘のように、2人きりのエレベーター内は険悪ムードが漂う。
今だけでも素直に嬉しいと喜んでいればよかったのだろうか?
後腐れのない関係を望んだ女に、好きだと言う彼の真意がわからない。
そもそも、なぜ私だっだのだろう?
社内の人間でない方が、彼には都合が良かったのではないだろうか!
考えれば、考えるほどわからなくなる。
聞きたいのに、聞けない。
彼の嫌う面倒な女になりたくないからだ。
彼が私を選んだ理由があるとするなら、それは私なら公私混同をしないと思っているからに違いない。
関係が終わっても、以前と変わらずに上司と部下という良好な関係を保てると…
数分前までは、私もそう思っていた。
それが彼の言葉1つで、傷ついている。
私が本当の彼女だったなら、傷ついた表情を見せ素直に言いたいことを言っても、受け止めてくれるだろう。
だけど、後腐れのない関係の女から感情をぶつけられたら、面倒だと切り捨てるだろう。
そうなったら、今まで通りの良好な関係に戻れない。
彼の側にいられないのだと考えると、言いたいことも言えず険悪な時間に耐えるしかなかった。