駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
15時まで後10分ほどか…
ふーっとため息が自分とは別のところからも聞こえて来た。
みんな、優也の不機嫌オーラから解放されて手が止まっていた。
「ウッ〜、疲れた。今日の部長怖すぎ」
背を伸ばす者
「肩が痛い」
首を回し、自分で肩を揉む者。
デスクに、体を埋めている者。
みんな、強張っていた体を休めている。
「工藤さんのコーヒーのおかげで、部長の機嫌も少しよくなったみたいだね」
「えっ、どこがです?」
「えっ、わからない?」
はい、全くわかりませんと頷く。
「パーテションから出てきた時、笑ってた気がするんだけど」
うん、うんと私以外が頷いて同意している。
「そうなんですか?気がつきませんでしたけど、普通にコーヒーのカップを渡しただけですよ。私」
「うーん、なんでかわからないけど、これで仕事しやすくなるならいいよね」
「工藤さま、さまだ。やっぱり、部長案件で困った時は工藤さんしかいない。これからも頼むね。部署異動とかしないでよね」
みんな、勝手だと苦笑いしながら思っていたら指示された時間になる。
ヤバイ…
「部署異動より、結婚退職が早いかもしれないですけどね」