駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
関係を解消するときがきた
「仕方ないとか言うな」
壁を叩いた音にビクッとしたが、それ以上に今まで聞いた事のない低い声に怖くなる。
「りいさ…怖がらせてごめん。逃げないでくれ」
優しく包む腕とちょっと切なくかすれる声が震えていて、逃げ出したい気持ちを持った事を申し訳なく思う。
彼の顔が首元に落ち、かかる吐息に脳から子宮に向かってツーンと熱が走り体が震える。
まだ体が、数時間前の肌の熱を覚えていたらしい。
愛しさと切なさで、無性に彼を抱きしめたくなり体を反転させて彼に抱きついていた。
すると彼の腕に少しだけ力が加わり、体が密着する。
ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ…
シーンと静かな空間に、聞こえないはずのお互いの心臓の音が響いている気がした。
彼が緊張している。
そう思うだけで、なんだか不思議と可笑しくて可笑しくて笑っていた。
「ふっ、ふふふふふふ…ごめんなさい。ふっ、ふふふ」
笑いが止まらない。
こらえようとすればするほど、おかしさが増す。
彼は少し腰を屈め、私の顔を怪訝な表情で覗く。
「ご、ごめんなさい。と、止まらないの」
声を殺して笑いを噛み締めた。
「何がそんなに可笑しいんだ?」