駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
そして、また手を繋がれてお店を出る時に会計をしてくれた誠に優也は繋いだ手を見せるようにして意味深なセリフを残していた。
「この通りだ。諦めろ」
ここに来たのは、奴にライバル宣言されたからには、勝利宣言をしておこうと思ったからだった。
里依紗は、もう俺のものだと知らしめ諦めさせる必要があったからだ。
悔しそうに小さく舌打ちする音を聞き逃さない。
店を出て1番のライバルを排除できた事に浮かれている。
後は、里依紗に好きだと言わせるだけ…
会社を出る時から恋人のつもりで手を繋ぎ、もう、誰にも隠すつもりはなかった。
そうさせたのは、里依紗だ…
こんなに好きだと態度に出しているのに、頑なに後腐れのない関係にこだわっている。
そうまでして里依紗を繋ぎとめておきたかった俺の一言のせいだが、それを上書きするくらい甘やかしているのに、伝わらない。
俺を見つめる瞳は好きだと言ってくれてるのに、肝心の彼女の口は、好きだと言ってくれない。
つれない答えしか返ってこないのだ。
どうしたら、好きだと言ってくれるのだろう。
「俺の家でゆっくり話をしようか」
予想外だったらしく躊躇いながらも家までついてきた里依紗を玄関に入るなり抱きしめ囁いた。
「関係を解消しよう」