駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
「はいっ?」
間の抜けた返事に彼は苦笑気味。
「今度はりいさの気持ちを聞きたい」
私の気持ち…
ボッと熱くなる顔を両手で隠し、上目遣いに彼を見た。
「本気なの?」
「…最初から本気だけど」
「後腐れのない女が良かったんじゃないの?」
「りいさを手に入れる口実」
悪びれた様子もなく、私の髪を撫でる手がそこにある。
「面倒な女は嫌いでしょ?」
「うん、嫌い…」
はっきり言い切る声に心が折れそうだ。
「だけど、りいさだったら、面倒でも一緒に居たい」
私の気持ちを浮き沈みさせる彼の言葉に思考が追いつかない。
「…信じてもいいの?」
「なにを⁈俺の気持ちが信じられないの?」
「そうじゃない、けど…好きって言ってもらえるなんて思ってもいなかったから、信じられなくて…」
「日頃の俺の行いの悪いせいもあるから、ただ、好きだって言ってもお前は信じないと思ってた。だから、りいさを手に入れる口実で契約を持ちかけた。そうでもしないとお前は俺の側にいようとしないだろう⁈あの夜、女といる俺を見つけて逃げ出すぐらいだからな」
確かに、好きだと言われてもからかわれているとしか思わなかっただろう。