駆け引きは危険で甘く、そしてせつなくて
「そろそろ、言ってほしいんだがな?」
なにを?
首を傾げると、不機嫌な表情をする。
「目は口より正直なくせに、この口は…」
上下の唇を彼の指が摘み、憎たらしいそうに揺さぶった。
「い、痛いんですけど」
「それくらい大したことない。言ってくれないと俺、限界なんだけど…早く彼氏としてキスがしたい俺を弄ぶのも限度があるぞ」
キスなんて散々許可なしにしてきたくせに、今更…
彼氏として⁈
いやいや聞き間違いじゃないかと…と首を左右に振る。
それから、彼に視線を向けると期待で待ち構えてワクワクしている顔に、突然の照れ臭さに顔を覆い隠した。
「なんなの…その嬉しそうな顔。普段、愛想笑いか無表情なくせに、普段の優也はどこ行ったの?」
「好きな女といるのに、作る必要がないだけだ。りいさの前だけは、素の自分を出してたつもりだけど、足りなかったか?これからはもっと素の俺を出すか」
足りなかったかなんて…そんなに心臓がもたないから、勘弁してほしいって伝わらない。
「りいさ、素直になれ」
極悪な色気を含んだ表情で命令され、催促する唇の上をなぞる指から逃れる術を知らない私は、唇を開いていた。