この広い世界で巡り会えた奇跡
第1章
パンッーーー
乾いた音と共に私の頬に鈍い痛みが走る。
「私はあんたの為を思って言ってるの!
なんでそれを分かってくれないの??!!」
そう言って泣き崩れる一人の女性。
私は殴られた頬を右手で押さえながら呆然と床に座り込み涙を流すその人を見ていた。
泣き崩れたこの女性は私のママだ。
瀬戸美和子。シングルマザー。
2年前に私の父でありママの夫でもあった瀬戸隆一と離婚。離婚の理由はパパの浮気だったらしい。元々3人で暮らしていたがパパと離婚した為今はママと私の二人暮し。
離婚する前は優しく笑顔が絶えなかったママだが父と離婚してから一変。
数々の悩みのせいかママは私に暴力を振るうようになった。
シングルマザーで私の学費を払いつつ生活費も賄わなければならない。どこか遠出する余裕もなく朝から晩まで働き詰めの毎日。初めてママから暴力を受けた時は本当にショックで痛くて悲しくて泣き喚いていたが、今はママの状況を理解している。ストレスが溜まるのも仕方が無い。そう思って私は日々繰り返される暴力を耐えている。
私を1人で支えてくれているからこれくらい耐えなきゃいけない。
そう心に言い聞かせ今日も重い玄関の扉を開け、行ってきますと小さく呟くとすすり泣く声が聞こえる家をあとにした。
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