月が綺麗ですね
うわー、秘書の鏡。私だったら絶対帰っちゃうのにな。


「俺はそんなに疲れてはいない。体力には自信があるし。むしろ君が体調を崩しでもしたら、明日の業務に差し障る。今日はもう帰ってゆっくり休んでくれ」


「私の体調を気づかって下さるんですか?」


飯塚さんはもはや泣きそうだ。


そんな副社長と飯塚さんの会話を冷たい目で見てる北林さんの姿が視界に入ってしまった。

...怖い。

いや違う。きっと私だって同じように飯塚さんと副社長をシラケた目で見ていたに違いない。人の振り見て我振りってやつだ。


私、副社長に優しくされている飯塚さんに嫉妬している。

コホンと咳払いをして下を向くと、私は表情を緩めた。


そう言えば『社長は自分が仕事をしている時は、秘書が先に帰るのは絶対に許さない』って以前三浦さんが愚痴をこぼしていたっけ。

...副社長って誰にでも優しいのかな?
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