月が綺麗ですね
「副社長がそこまでおっしゃって下さるのなら、私、これで失礼いたします」


赤く染めた頬に笑顔で飯塚さんは副社長に応える。


「ああ、そうしてくれ」

「はい」


私は心とは裏腹に作り笑顔で二人の会話を見守る。


「じゃあ、進藤さん後はよろしくね」

「えっ!?あ...は、はい。任せて下さい」


何きょどってるのよ、しっかりしろ風花っ。


「進藤は先日の件で話があるから俺の部屋に来てくれ」


...先日の件?


するとすかさず飯塚さんがツッコみを入れ、眉間にシワを寄せその顔はすぐに不審の色を浮かべる。


「先日の件って何ですか?私の存じ上げない件でしょうか?」


私の管理者でもある飯塚さんの問いは当然のもの。なのに、『そこまでいちいち飯塚さんに報告しなくちゃいけないの?』などとひねくれた感情が沸き上がる。

女の嫉妬は一番醜いって公言していたのに...私、最低。


「ああ、例の大口さんの事後処理を進藤にしてもらいたいんだ」


「...そうでしたか」


納得したように、飯塚さんは頷いたのだった。
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