月が綺麗ですね
あれこれドアの前で自問自答していたら、突然目の前の扉が開いた。


「いつまでそこに立っているつもりだ?」

「えっ!?」

「さっきから気配を感じていたんだ」


うっ...。


どこまでも私のやる事なす事見透かされている。


おずおずと室内に歩を進めると、背後でガチャリと扉が閉まる音がして、慌てて振り返る。

副社長が扉を閉めただけなのに、その音に何故か過剰に反応してしまう私がいる。



「どうした?」

口元を緩めながら副社長は首を傾げる。


「...い、いえ」


もしかしたら、副社長は私と飯塚さんを天秤にかけているのかも?

北海道のホテルで飯塚さんに、私にしたのと同じことをしたのかも?

どちらがいい女か、自分に相応しい女かを見極めようとしている?


だって、飯塚さんは副社長の花嫁候補ナンバーワンなんだから。
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