月が綺麗ですね
10階建てのワンルームマンション。その最上階の角部屋が私の部屋だ。

エレベーターを降りて玄関まで来ると、


「本当は心配で一緒に一晩過ごしたいんだが...」


どこか迷った表情。

彼に心配を掛けたくないし、負担にもなりたくない。
連日の深夜までの残業は、徹さんの体力だって奪ているはず。それなのに、私を毎日自宅まで送り届けてくれている。



「平気です。それに私まだ徹さんに襲われたくないですから」

「コイツっ」


笑いながらおでこを人差し指でコツンとされる。


「冗談を言えるくらいなら心配はないな」


そう言うと、コンビニの袋を差し出す。


「時間が遅くて大した物が残っていなかったんだが、サラダとスイーツに飲み物だ。少しでも食事をして、明日俺に元気な姿を見せてくれ」

「ありがとうございます」

「また泣く」

「...だって」


彼のスーツの裾をキュッと握る。
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