月が綺麗ですね
誰もいない共用廊下で彼は私の瞼にそっと口づけた。


「お前は本当に泣き虫だな」

「...だって徹さんが優しいから」

「宝物を大切にするのは当然だ」


宝物...その言葉がどれだけ私をキュンとさせるかあなたは知っていますか?

思わず彼を見上げると、長い指で溢れ出した涙を徹さんはそっとぬぐう。


「そんな顔をされたら自制心を抑えられなくなる」


少しだけ乱暴に私の体を自分の体で包み込む。


「風花は悪い子だ」


耳元に熱い息がかかり、私はビクンと体を震わせた。


「この責任は風花にとってもらうからな」


えっ?
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