月が綺麗ですね
エレベーターホールで私たちがもめていると、車を降りた専務が近づいてくる。

60代の六ツ島専務。私の指導教官の三浦さんの未来のお義父さんになる人で、穏やかな笑顔が印象的だ。

しかし...役員は揃いも揃って皆さん六ツ島さん。ややこしいことこの上ない。

同族経営だから仕方ないのだけれど。



「おはようございます」


真っ先に私が頭を下げる。


「おはようございます」

続いて徹さんが挨拶をする。


「おはよう」


徹さんの叔父でもある専務は、役職が下でも甥に対して敬語は使わない。



「今日は秘書同伴で出勤かな?」

「まあ、はい」

「さっきからもめているようだが、エレベーター来ているぞ」


えっ!?


「申し訳ありません」

私は急いで乗り込むと”open”のボタンを押す。
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