月が綺麗ですね
「進藤くん」

名前を呼ばれて私は「は、はい」背筋を伸ばして専務を見る。


「君が一族に加わる日を楽しみにしているよ」

「えっ、はい、あの...」


答えるすべを知らず、私は徹さんに助けを求めるように視線を送る。


「躾が行き届いていませんで、申し訳ありません」

言いながら徹さんが私の頭にガシッと手を乗せると強引にお辞儀をさせられる。


うわっ、何、何?


けれどこの状況だと私もお礼を言ったほうがいいんだよね?


「あ、ありがとうございますっ」

取りあえず口裏を合わせるようにお礼を言った。


「うん?まだそこまで話が進んでいなかったのかな?」

首を傾げる専務に、


「いいえ。僕と進藤は間違いなく結婚します」


語気を強めて彼は改めて”結婚”の二文字を復唱したのだった。
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